はじめに

電力系統の定態安定度(系統のじょう乱がきわめて微小な場合に安定に送電できる能力)、過渡安定度(系統に大きなじょう乱が発生した場合にも脱調することなく新たな平衡状態に回復して安定に送電を継続する能力)の基礎概念を理解するには主に、出力‐相差角曲線および等面積法を用いる方法と、位相面図上のセパラトリクス(安定限界面に対応する軌道)を用いる方法があります。位相面図を用いる方法は、一機無限大母線系統の古典モデル(2次元モデル)の安定度を平面上に於いて図形的にすべて説明することができます。

本研究では、位相面図を用いた系統安定度を解析するシミュレータを試作しました。系統定数や変数の意味、系統事故に伴う線路の変化などを視覚的に把握できるようにシミュレータ画面を構成しています。

このシミュレータが皆様の電力系統安定度の理解に少しでもお役に立てることを願っています。

シミュレータの起動画面

 

画面説明

 startボタン(またはreset timeボタン)を押したとき

安定平衡点に収束

 

脱調 (発電機が動機を保てず不安定となる)

 

 位相平面上でマウスをクリックしたとき

安定平衡点に収束

 

脱調

※注意  描画部分が他のウィンドウなどで隠れたり、ウィンドウを最小化した場合はそれまでの描画は消えてしまいます。

 

 画面中央部の系統図はその時点での線路の状態を示し、下のように移り変わります。

 

事故前:0〜fault

事故発生(fault):fault〜clear

事故除去(clear):clear〜reclose

再閉路(reclose):reclose〜

 

操作方法

  ボタン操作

startボタン … シミュレーションの開始

 位相面図上に描画を開始します。シミュレータを起動した直後やstopボタンを押した場合はこのボタンを押すまで何も描画されません。

stopボタン … 停止

 startボタンを押すまで何も描画されません

clearボタン … 描画部分のクリア

描画中にこのボタンを押すとそれまでの描画部分はクリアされますがすぐにクリア直前の位置から再描画が始まります

frameopenボタン  … 発電機出力の時間変化を表すフレームを開く

 位相面図上の描画と共に出力‐時間曲線を描きます

framecloseボタン  … フレームを閉じる

draw s-regionボタン … 安定限界の軌跡(セパラトリクス)を描く

赤色の軌跡は事故発生時のセパラトリクス、緑色の軌跡は事故除去時のセパラトリクスを示しています

reset timeボタン   … 時間を0(事故前)にもどす

 描画中に押すとその地点から時間をカウントし始めます

 

  マウスクリック

シミュレータの位相平面上でマウスをクリックすると、δ,ωの値が変更され、その位置より描画を開始します。

 

  パラメータの設定

各パラメータを変更するには、変更したいパラメータをマウスで選択した後に数値を変更し、Enterキーで決定して下さい。Enterキーを押した直後から変更後のパラメータでのシミュレーションを開始します。

 

パラメータの説明

 Pm 発電機への機械入力(pu) a 事故発生地点の設定変数

 eq’ 過渡リアクタンス背後電圧(pu) fault 事故発生時間(sec)

 D 制動係数(pu) clear 事故除去時間(sec)

 M 発電機慣性定数(sec) reclose 再閉路時間(sec)

 Xt 変圧器漏れリアクタンス(pu)

 Xl 送電線リアクタンス(pu)

 V 無限大母線電圧(pu)